宇宙空間で円・楕円軌道を進む宇宙船が、前方に加速するとどうなるか考えてみましょう。
ここでは、宇宙船に乗っている観測者の立場で考えることにします。
① 後方への燃料噴射により前方に加速すると、宇宙船の速さは当然大きくなります。
② しかし、同時に遠心力が大きくなるため、もとの軌道よりも地球から遠ざかる(=軌道の長半径が大きくなる)ことになります。
③ ケプラーの第3法則より、楕円軌道の長半径が大きくなれば周期も長くなります。
つまり、1周する時間が、もとの軌道にいたときより余計にかかってしまい、ISSから遅れていくことになります。
上記②の問題を解決する方法を考えましょう。
まず、前方に少しだけ加速します。
遠心力が大きくなりますが、それに対抗して、地球に向かう向きの力を噴射などで加え続け、半径方向の力がつり合った状況を保ちます。
半径方向の力がつり合いつづけているので軌道が変わりません。
同じ軌道のまま、速さだけは大きくなっているので、周期は短くなります。やがてISSに追いつくことができるでしょう。
…とはいえ、地球に向かう向きの力を加え続けるのは現実的に大変そうです。実はもう一つ方法があります。
結論から言うと 、逆噴射により「少しだけ減速する」という方法です。
減速すると、当然ですが、加速したときと逆のことがおきます。つまり…
①′ 宇宙船の速さが小さくなります。
②′ 遠心力が小さくなるため、もとの軌道よりも地球に近づく(=軌道の長半径が小さくなる)ことになります。
③′ ケプラーの第3法則より、楕円軌道の長半径が小さくなれば周期も短くなります。
つまり、1周する時間が、もとの軌道にいたときより短くなるため、ISSに徐々に追いついていくことになります。
「軌道が内側にずれているから、現実ではドッキングできないんじゃないか」という疑問が聞こえてきそうです。
しかし、その問題を解決する方法はもうやってみているはずです。
そうです。「前方に加速する」という方法ですね。十分追いついた後に前方に加速することで、もとの軌道に戻ってドッキングすることが可能です。
このシミュレーションを作るに当たり、以下のような逸話を目にしました。(真偽は不明、だいぶ昔に見たのでソースも不明です)
第二次世界大戦や朝鮮戦争で活躍した軍人が退役するころ、ちょうど宇宙開発全盛期であったため、元空軍パイロットが宇宙船パイロットになることも多かったそうです。
飛行機であれば、敵機を追うときなどは前方に加速して近づいていたことでしょう。
そんなパイロットが宇宙船を同じ様な感覚で操縦してしまうと…
「目標に向かって加速しているのに追いつけない、それどころか離れていく!」
宇宙の不思議に、大いに悩まされたことでしょう。
ちなみに、ここでは分かりやすいように「ドッキング」という言葉を使っていますが、専門用語では「ランデヴー」というそうです。
この現象について調べる場合は「ランデヴー」をキーワードにして検索すると良いでしょう。